映画「スティーブ・ジョブズ」※ダニーボイルの方 を観た。

※ダニーボイルの方

徹底した会話劇で、三幕ある密室劇を観ているようで、その言葉の波に飲み込まれるようにして集中して見ることができました。

面白い映画だと思います。

ただ、ダニーボイル監督の作品は好きでよく観るのですが、あらためてダニーボイルらしさってなんなのか、よくわからなくなりました。

撮る映画全て恐らく原作に忠実に撮りきる人なのかなと感じました。

なんにせよ、スティーブ・ジョブズの事ほとんど知らないし、アップル製品もiPod位しか持っていない私でも(逆に先入観なく観れたのが良かったのかもしれませんが。)充分楽しむことができた映画でした。

たぶん脚本家がすごいんだとおもいます。

世の中を変えるのは確固たる信念と狂気で、ある意味アーティストだけが世の中を変えられるのだと教えられた気がします。

どうやら世界ではリンゴの木からは色んなものが生まれたようです。

次のリンゴは何を生み出すのでしょうか。

楽しみです。

「美しい女性を口説こうと思った時、ライバルの男がバラの花を10本贈ったら、君は15本贈るかい??そう思った時点で君の負けだ。ライバルが何をしようと関係ない。その女性が本当に何を望んでいるのかを、見極めることが重要なんだ。」

いいこと言いますね。

ジョブズの事、もっと知りたくなる一本でした。

Abbey Road

Abbey Road



最近、心が乱れてるなと思うなら、美しい日本語の波に溺れるといい。

日本語は美しい言葉だ。

その事実をどれ程の人が認識していて、これほどその事実を実感させてくれる小説があるだろうか。

ストーリーは、特になにもない日常生活の些細な出来事を淡々と書き綴っているだけなのだが、登場人物が立ってくるというか、設定である大正期の大阪の旧家の家の中に引き込まれて、そばでこの家族をじっと見ているような感覚に陥らせる。

永遠に読み続ける事が出来そうな流暢な上流階級の上方言葉。

関西弁は苦手だが、これを読むと芦屋にでも住みたくなる。

谷崎潤一郎が、文章を人に読ませるためにどう書くかを徹底的に考えて、さらにそれを分かりやすく仕上げているその圧倒的な筆力を強く感じる上巻。

日本文学にそびえ立つ、谷崎潤一郎という大きな山脈を実感できる。

このままなにも起こらなくとも、この日本語の波に飲み込まれていればそれで幸せであると思える本。

日本語を読むことができてよかったと心から思う。

美しいものは人をみとれさせ、時間を奪う力を持つが、それと同じ感覚。

ちなみに登場人物の4姉妹をどれだけ美しい人だと想像できるかも、この本に夢中になるための重要な要素だと思う。

おれのなかで雪子は天使になっている。

中巻、下巻とまだまだ楽しみである。

出来れば天使に結婚して欲しくないとさえ、思い始めてしまっている。

細雪 (上) (新潮文庫)

細雪 (上) (新潮文庫)

インドでゾウが暴れたらしい。けど、そんなことよりおれは自由が欲しいのだ。

はぐれゾウが暴れて建物を約100箇所破損させたというニュースをみた。

インドの西ベンガル州シリグリという街で起きた事件だ。

日本で生活している身としては、いろいろと想像を凌駕する出来事のように思う。

想像を凌駕していること 。

その1 はぐれゾウについて。
ゾウの生態はよく知らないが群れで生活している事くらいは知っている。ただ、シリグリという町はブータンバングラデシュ、ネパールの国境付近の交通の要となる町のようで、東京でいうと板橋ジャンクションみたいなものを想像して、そう思うとそんな町のそばにゾウの群れがいてしかもはぐれた奴がうろうろしているとか恐ろしい。普段も群れ自体は身近にいるんだろうか。踏まれたくない。

その2 破壊された建物について。
そもそもゾウが暴れて町が100箇所も破壊されるのだろうか。アジアゾウの重さはオス、平均約4,000~5,000kg、メスは約2,000~3,000kg。今回暴れたゾウはメスとのことなのだが、うむ。それでもたしかに重い。この重さの生き物が暴れたら大手町なら耐えられそうだが、たしかに板橋の町なら破壊されそうだ。ただ、100箇所とはそうとうだと思う。どれだけ脆弱な町作りなんだろう。板橋なら30箇所程度で済むのではないだろうか。

その3 捕らえるまでに7時間。
先程の続きで、板橋で暴れたと仮定して、板橋の町を練り歩くゾウを板橋のマダムが発見して、口をあんぐり開けて呆然と見つめ、ゾウの雄叫びで我に返りあたふたと携帯をカバンから取りだし、震える指を懸命に堪えながら通報するまでに数分。通報を受けた警察も本当かどうか半信半疑でとりあえず向かいますと近くのパトカーに連絡をして、現場に到着するまでに40分。本当だったと驚いて、そこから麻酔銃を打つまでに多分関係各所に連絡をして一時間程度だろうか。エトルフィンと呼ばれる人間には使用できない強力な麻酔薬を発射して10分程度で昏倒、捕獲。ということは、少なくとも2時間、長くても3時間で捕獲だろうか。7時間って何をしてたら7時間かかるんだろうか。

板橋を基準にしていると疑問は尽きない。

まさに想像を凌駕している。

たかだか、ネットニュースで数行の、世界経済が混乱しているなかで、本当にどうでもいい、世界の片隅の些末なニュースではあるが、明らかにすんでいる世界が違う、違和感だらけの出来事に、インドという国にとても興味が湧いてくる。

インドに行ってみたい。

ガンジス川の畔で一服したらさぞやおいしいだろう。

めちゃめちゃたかられそうだから、小銭は沢山持っておこう。

友達はインドでタクシーに乗ったら初乗り30000円で激怒して降りたらしい。

ぼったくりには気を付けよう。

お腹は強いので大丈夫だろう。

シャワーは毎朝毎晩浴びたいな。

はー自由が欲しいな。

インドぢる

インドぢる




こんな夜に。

叫びだしたくなる夜がある。

日中の失敗が時間の経過とともに増幅されて、自分が消えてなくなりたくなり、でも消えるわけにもいかないので叫びたくなる。

こんな夜にお前に乗れないなんてっていうのは有名な歌詞、たしかに、こんな夜、何かに乗りたくなる。

でも、何に乗ったらいいんだろう。

忌野さんならなんて言ってくれるんだろう。

スローバラードが聞きたい。


忌野さんの言葉
「こむずかしい理屈をこねたりしてる歌なんて、最悪。単純なラブ・ソングこそ、最高なのに。」

いいこと言うわ。

ネズミに捧ぐ詩

ネズミに捧ぐ詩


トイレの中で、うれしい悲鳴をあげている。

トイレに必ず本が置いてある。

大きいのをしていると手持ち無沙汰になりがちなので、いつでも本を読めるようにセッティングしている。

置いておく本のポイントは2つ。

短いエッセイというか、小説というか、とにかく短編集であること。

つまらなくてもう1ページもめくりたくないというものではなく、かといって、難しすぎてかんがえこんでしまうというものでもなく、ライトな内容で適度に面白すぎないこと。

この2つを見事に満たしているこの本。

「うれしい悲鳴をあげてくれ」

決して馬鹿にしているとかではなく、人も本も適材適所が肝要で、必ず配置されるに相応しいところがあると思っている。

ちなみに今、電車のなかで谷崎潤一郎細雪を読んでいるが、これなんかは配置に失敗した典型的な例だと思う。

日本語の美しさを噛み締めるように読むべき名文を、忙しなく乗り換え、乗り過ごさないように注意を配りながらの電車の中では堪能しづらい。

一方でこの本はゆっくりと、じっくり自分の体調に合わせ長い月日をかけて、1話づつトイレにはいる度に読み進めて、ついに今日、読破した。

どうということはない内容。

特に記憶に残ることもないが、妙な達成感。

あとがきまで読み終わった瞬間、やっと終わったと、うれしい悲
鳴が小さく上がったのであった。


うれしい悲鳴をあげてくれ (ちくま文庫)

うれしい悲鳴をあげてくれ (ちくま文庫)

映画「サウロの息子」を観た。

 

強制収容所で、ユダヤ人が、ユダヤ人を殺すための準備をして、殺したあとを片づけて、時が来たら自分もユダヤ人なので殺される。

 

強制収容所内での特殊な仕事を請け負わされていたユダヤ人の集団ゾンダーコマンド。

 

ゾンダーコマンドの1人、サウロの目線の側に常にカメラはおかれる。

 

最初は手ぶれやピンボケ等がひどいように感じて観ていて疲れるなと思っていたが、凄惨なシーンをピンボケ・手ぶれにする事によってサウロの閉ざした心を表現しているのかと思うと、凄く集中して見れるようになる。

 

ユダヤ人達が最初のガス室へ送り込まれるまで、送り込まれた後のシーンは本当に胸が苦しくなる。

 

ガス室の中の同胞の叫び声を聞かされるゾンダーコマンドの人達。

 

そのあと、無言でガス室の清掃をおこなう。

 

ユダヤ人の死体は部品と呼ばれてものとして扱われ、最後は灰にされて川へ流される。

 

生きていたユダヤ人が灰になるまでの、全ての工程をゾンダーコマンドのユダヤ人たちがおこなっている。

 

悲惨としか言いようがない灰色の世界だ。

 

世界は灰色のまま、映画は終わる。

 

人はどこまで残酷になることができるのか。

 

簡単なことは言えない。

 

差別は恐ろしい。

 

差別的な人間は好きではないし、差別をしたいと思わない。

 

人間は生まれながらにして不公平ではあると思うが、不平等

ではなく、全ての人は人生に対して価値ある意味を享受する権利を持っていると個人的には考えている。

 

差別はなくならないって誰かが言っていたが、世界の距離がどんどん近くなっている中では民族に対しての差別意識は無駄でしかないとおもう。

 

世の中に必要なのはLOVE&PEACEなのだ。

 

やっぱりボブマーリーは最高だ。

 

Live

Live

 

 

名曲喫茶ライオンにて。

雨はひたひたと降り続いている。

寒さに背中を丸めて足早に渋谷の街を歩く。

天気予報は夜半から関東地方は平野部でも大雪に見舞われるので注意してくださいと告げていた事を思い出す。

今週も金曜日までたどり着いた。

日々の業務で頭の中が渦巻いている。

忙殺されかけている。

脳の細胞が数字の抑圧で埋まり、思考を送るはずの電気回路が断線気味でうまく考えがまとまらない。

回路につまったゴミを流し出すために訪れた名曲喫茶ライオン。

創業は1926年。昭和で言ったら昭和元年。

マリリン・モンローが生まれて、4代目古今亭志ん生が死んだ年。

ジョン・コルトレーンが生まれて、大正天皇が死んだ年。

ライオンの席に座る。

雨はひたひたと降り続いている。

江戸川乱歩の小説のような、なんとなくおどろおどろしい、昭和モダンの世界観。

壁面を埋め尽くす、巨大なスピーカーとレコード。

誰の曲かはわからないが、どう聞いても歴史に軌跡を残したであろうことが容易に想像できるクラシック音楽が空気を染める。

俺を含めてお客は3人。

タバコを終始燻らせながら書き物に夢中になっている白髪の男。

クラシック音楽に聞き惚れているのか、一時間ほど観察していたが微動だにしない女。

そしておれ。

雨はひたひたと降り続いている。

コーヒーを注文して、ある作家が書いたデビュー作である小説のようなものを読みふける。

曲の間に、彼も江戸川乱歩に出てきそうな男だが、影のある店員が低いトーンで曲を紹介している。

時が止まっている。

雨はひたひたと降り続いている。

私語厳禁、撮影禁止、喫煙はオッケーという、時代錯誤な規約を設けながらも、お店は80年以上開きつづけている。

眠たくなってくる。

徐々に外の音が聞こえなくなる。

雨は雪に変わったのだろうか。

静かだ。

ゆっくりと、脳の電気回路に詰まったゴミに対して、緊張のない週末を過ごすための除去作業が、平均律によってなされていく。

そういうお店が名曲喫茶ライオン。

閉店は22時30分。

550円のコーヒーであらかたリセットできる。

そういうお店。



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