違和感は私を掴んで離さずに、週末の夜の闇の中で輝いているのだ。
「私は言葉が好き」。
すごく大胆な表現である。
その言葉を、なんのためらいもなく、そのかわいらしい唇から吐く。
普通に言うなら「好きな言葉」が順当な並びであるし、「言葉」というものはそもそもそれ自体に好き嫌いがあるものではなく、人を人たらしめる1つの要素であり、元素的なものであると思う。
また、〜が好きという、表現としてはいたってシンプルで、誰もが使ったことがある表現ではあるが、「好き」という単語をかけるには、あまりにも身近に有りすぎる「言葉」。
日常の中にいきなり放たれた鳥のように羽ばたき舞い降りてきた異質な一文。
違和感は、私を掴んで離さない。
その違和感のある「言葉」と「好き」を繋げた所に彼女の面白さがあり、ただ繋げただけではあるが、その二つを繋げることで、彼女は彼女という人間を見事に表現させて、むくむくと立ち上がらせた。
「言葉」というものを信じる傾向が強いと言われる、ある意味すごく女性的な表現なのかもしれない。
しかし、それは彼女の本質を捕まえているように思うし、彼女は「言葉」というものを徹底的に信じているということを教えてくれる。
少しだけ歪んだ魂をもつ彼女が、「言葉」という道具を使って、少しでも美しいものを捕らえようとする。
言葉は美しいものの、そのもっとも輝かしい瞬間を捕らえる力があり、それは受け手の想像を喚起するという点においては、映像や画像以上の力を持ち、おそらく彼女はその力に魅了されているのではないかと思う。
きれいな目で、いつも通りのかわいらしい微笑みを浮かべながら、今日はいい天気ですねと言うように、さらりとその言葉を吐き、その言葉を受け取った私の胸に、深く沈殿していく。
彼女の言葉が私のからだの中で勝手に反芻していき、物事に対してのためらいのなさ、それが彼女の大きな魅力なのだという事に、改めて、今さらながら気づいた夜。
うむ。アルコールがまわっている。いい夜である。
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