トイレの中で、うれしい悲鳴をあげている。

トイレに必ず本が置いてある。

大きいのをしていると手持ち無沙汰になりがちなので、いつでも本を読めるようにセッティングしている。

置いておく本のポイントは2つ。

短いエッセイというか、小説というか、とにかく短編集であること。

つまらなくてもう1ページもめくりたくないというものではなく、かといって、難しすぎてかんがえこんでしまうというものでもなく、ライトな内容で適度に面白すぎないこと。

この2つを見事に満たしているこの本。

「うれしい悲鳴をあげてくれ」

決して馬鹿にしているとかではなく、人も本も適材適所が肝要で、必ず配置されるに相応しいところがあると思っている。

ちなみに今、電車のなかで谷崎潤一郎細雪を読んでいるが、これなんかは配置に失敗した典型的な例だと思う。

日本語の美しさを噛み締めるように読むべき名文を、忙しなく乗り換え、乗り過ごさないように注意を配りながらの電車の中では堪能しづらい。

一方でこの本はゆっくりと、じっくり自分の体調に合わせ長い月日をかけて、1話づつトイレにはいる度に読み進めて、ついに今日、読破した。

どうということはない内容。

特に記憶に残ることもないが、妙な達成感。

あとがきまで読み終わった瞬間、やっと終わったと、うれしい悲
鳴が小さく上がったのであった。


うれしい悲鳴をあげてくれ (ちくま文庫)

うれしい悲鳴をあげてくれ (ちくま文庫)